東京オリンピックの警備について、分かっていることまとめ

2020年の東京オリンピックに向けて、民間のセキュリティ会社(セコム・アルソックなど)と警察が協力して警備する準備が行われています。現状分かっていることをまとめました。

オリンピックに向けての民間警備員の取り組み

民間警備員は1万4000人体制で臨む予定

2020年に開催予定の東京五輪の警備人員に関して、五輪組織委員会はのべ5万850人もの警備員を動員すつもりである事を発表しています。

その内訳は、警察官2万1000人、民間の警備員1万4000人、ボランティア9000人となっています。

また、2018年8月7日に開催された第11回「防衛省・自衛隊2020年東京オリンピック・パラリンピック競技大会及びラグビーワールドカップ2019特別行動委員会」にて小野寺防衛大臣が、宮城県にある航空自衛隊の松島基地で行われる聖火到着式に協力するなど防衛省と自衛隊も東京オリンピックの支援を行う事が予定されています。

民間警備員導入の課題

民間警備員を導入するにあたって、以下の2つの課題があります。

・警備員間の統制

・警備員の不足


東京オリンピックでは、多くの民間警備会社から協力を仰いで警備を行う予定ですが、別の企業に属する警備員間をどのように管理すれば良いのかという問題があります。その解決策として、警備会社間の共同企業体を結成しています。


警備員の不足問題に対しては、警備員の採用システムの見直しで解決を図っています。また、ドローン等の技術を上手く活用することで、効率的な警備が行えるシステムの構築にも取り組んでいます。

過去の失敗・成功事例を紹介

北京オリンピック

2008年に開催された北京オリンピックでは、総勢150万人という大規模な警備体制が組まれ、無事重大なトラブルもなく終える事ができました。

この警備員の内訳は警察・軍隊が10万人、民間ボランティアが140万人。警備費には4000億円もの大金がつぎ込まれており、東京オリンピックの警備費の予算1600億円の実に2.5倍にも上ります。

記事下部でも触れますが、今回の東京オリンピックでは、ドローンやAI等の最新技術を用いて、少ない人員でも効率的に警備が行えるようなシステムの構築が検討されています。

ロンドンオリンピック

2012年に行われたロンドンオリンピックでは、世界最大の警備会社「G4S」に警備員の派遣を依頼していましたが、予定した人員1万人は準備できず、4000人で警備を行う事になってしまいました。

この警備員不足の原因は、直前に起きたテロ事件にあります。

イギリス政府は、当初2000人を配備する予定でしたが、テロ事件を受けて、オリンピック直前に1万人にまで人員を増やす事を決意。しかし、G4S側も直前まで警備員の訓練を進めておらず、その人員増加に対応できませんでした。

結局退官した警察官などに協力を仰ぐことで人手は確保できましたが、不測の事態に備えて余裕を持った計画を行うべきだったと思います。

東京オリンピックはこの教訓を生かし、早くから警備会社が連携体制を取っています。

警備会社の共同企業体

SECOMとALSOKが手を組む

2018年4月、東京オリンピックに向けて、日本の大手警備会社のSECOMとALSOKが手を組み、この2社を中心として14社の警備会社の共同企業体(JV)が結成された事が明らかになりました。

このように警備会社を一括に管理することで警備体制の管理がしやすくなり、効率的に人員を配備できると期待されています。

SECOMの中山社長は「1万4000人という警備員の数は日本で行われたイベントの中では空前の規模」と語っており、不足の事態にも柔軟に対処できる警備体制の実現が望まれます。

最終的に100社以上の参加を想定

今現在、この警備共同企業体に参加している企業は、公安警備保障、第一総合警備保障、全日警、高栄警備保障、セントラル警備保障、ジャパンパトロール警備保障など。

五輪で必要とされている民間警備員の数は1万4000人であり、この14社だけでは到底賄えないので、100社以上が参加するよう呼びかけを行っています。

警備員の教育システム・採用法の見直し

人手不足の現実

有効求人倍率は求職者に対する求人数の割合のことで、1より大きいほど求職者が少なく人手不足という事になります。

2016年の警備員の有効求人倍率は6.53倍で、全職業での値1.10倍の6倍の値となっており、警備業界が人手不足である事が分かります。また、求職者が少ないということは、警備員という職が不人気であるという見方もできます。

不人気の理由としては、「給与が低い」、「キャリアアップが望めないイメージがある」といったものが挙げられます。また、2017年の警備員の平均労働時間は164.5時間で全職種の平均143.4時間よりも多いことも不人気である理由の一つだと思われます。

警備員採用法の見直し

警備員に採用されるためには、

1.公安委員会の検定試験を受験

2.国家公安委員会に登録された講習機関で講習を受ける

の二つの方法が用意されています。


2018年3月に行われた有識者検討会では、警備会社や五輪ボランティア希望者等から警備員採用における知識や技能の習得にかかる時間の短縮を求める意見が多く寄せられ、政府はその解決案を検討しました。

その一つが「e-ラーニング」の導入。e-ラーニングでは、インターネット上で講習が受講できるので、若者世代を取り込むのに有効であると考えられています。

また、警備員の検定制度を定める国家公安委員会規則の改定を行い、より効率良く警備の知識と技能を身に着けられるカリキュラムにするよう努める意向を示しています。

警備を助けるシステムの導入

導入予定の警備システム

東京オリンピックでは、5万人を超える警備体制に加え、以下のような最新技術を取り入れて、警備の効率化を図っています。

・ドローンを活用した警備

・AIの画像認識を用いた警備

ドローンを活用した警備

SECOMは、小型で自律飛行が行えるドローンで監視するサービスを世界で初めて取り組んだ会社です。

東京オリンピックの警備会社連合にはSECOMも参加しており、ドローンでの監視システムにより上空から犯罪を察知し、少ない人員でも効率的に警備が行えるようになるであろうと期待されています。

AIの画像認識を用いた警備

ALSOKでは、AIの画像認識を用いて監視カメラの映像から不審者を割り出すシステムの開発を行っています。

警備員、警備ロボット、ドローン等にカメラを設置し、その映像から不審者を探し出すという使い方をされる予定です。また、専用のアプリで現場の状況を共有できるようにし、ボランティアと連携できるような仕組み構築にも取り組んでいます。

東京オリンピックに向けて防犯意識を高めよう!【総括】

2年後に迫った東京オリンピック。人口約900万人を抱える大都市・東京の安全を守るために警備体制は着々と準備されています。

でもやはりこのような巨大都市に世界中の人々が押し掛けてくる訳ですからすべての犯罪を未然に防ぐ事は難しいと思います。

そうなると自分の身は自分で守るしかないです。「自分が犯罪に巻き込まれるはずがない…」という油断は禁物。オリンピックが始まる前に、身の回りの「防犯」について見直してみてはいかがでしょうか。

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