正当防衛やそれに似た概念は世界各地に存在します。そのため、正当防衛が認められた事件や、認められなかった事件が様々存在しています。
特に銃社会であるアメリカの事例は日本でも多く報道されています。例えばフロリダにはSave Your Groundという法律があります。これは、相手に危害を加えられていなくても、家や車・ボートへ侵入してきたものを武器を手に取って迎撃してよいというものです。
本記事では、出来るだけアメリカの事例に偏らないよう厳選した結果、以下の7つの判例を紹介することとなりました。
・アメリカ 老婆が侵入者へ発砲
・韓国 婚約者を襲った侵入者を攻撃
・中国 治安維持官へ刃物で反撃
・イラン 暴漢を背後から撃退
・ブラジル 家族を強盗から守る
果たしてこれらの事例において正当防衛は認められたのでしょうか?早速事件の内容を見ていきましょう!
2017年、テキサス州で74歳の女性が、自宅へ侵入した強盗をピストルを持って追い返すという事件が起きました。
夜中、Rebbie Roberson(レビーさん74歳)が目を覚ますと覆面と手袋をつけた侵入者から銃を向けられていることに気が付きます。そこでレビーさんは、驚くことにテーブルへ置いてあった銃(38口径のリボルバー)を手に取り、向けられた銃口を躱して逆に相手へ銃を向けます。
侵入者は逃走しましたが、レビーさんは追いかけます。銃を発砲しましたが、侵入者へ当たったかは不明。レビーさんいわく「この家に侵入する者はどんな相手であろうと倒す.。私がやられるか、相手がやられるかだ。」とのこと。ただし、とても怖かったのでもう2度と同じ目には遭いたくないとのこと。
レビーさんは正当防衛で不起訴となるそうです。なお、逃亡した男性はまだ見つかっていないそう。
2015年の9月に、韓国・ソウルで男性が自宅に侵入してきた男性を刃物で殺害するという事件が起きました。侵入者が男性の婚約者を刺殺した後、揉み合いになった際に男性が刃物を奪い、その刃物により侵入者を刺してしまったとのこと。
3カ月後の12月に、男性の正当防衛が認められ不起訴となりました。韓国では実に25年ぶりに正当防衛が認められたとして、当時話題となりました。
一方、事件現場について証言できるのが男性のみで他の目撃者がいなかったことから、真実をもっと追及するべきだという声も挙がっていたそうです。
2009年に中国で露天商を営む夏俊峰さんが、「城管」と呼ばれる治安維持職員を2名刺殺するという事件が起きました。男性の正当防衛は認められず、2013年に死刑が執行されました。
夏さんは妻とともに路上で屋台を営んでいました。城管は無許可営業を咎め、夏さんへを暴行を加えた後、事務所へ連行。そこでも数人の城管から暴力を振るわれた夏さんは、所持していたナイフで抵抗。2名の城管が殺害されました。夏さんは起訴され、死刑判決が言い渡されます。
大学教授や弁護士などの複数の知識人が死刑判決は不当であると主張しました。また、城管による暴力的な行為は日ごろから市民の悩みの種であったため、メディアでも広く報じられたとのこと。
しかし判決は覆らないまま2013年に刑の執行。多くの人々から批判される結末となりました。
2007年、男性のMorteza(モルテザ)さんが、女性のReyhaneh(レイハネ)さん(当時20代前半)に背中から刃物で刺され死亡するという事件が起きました。
モルテザさんはイランの元情報省職員。レイハネさんはインテリアデザイナーで、モルテザさんの事務所のデザインを担っていたそうです。
レイハネさんはモルテザさんから暴行を加えられそうになったため刺したと正当防衛を主張。また、当時同じ部屋に他の人物もいて、実際にモルテザさんを刺したのはその人物だと明かしました。
一方、検察はレイハネさんが事件の2日前に刃物を購入していたこと、刺されていたのがせなかだったこと、数日前には犯行を予告するメールを友人に送っていたことから、攻撃は正当防衛ではなく、意図的なものであったと主張。最終的には検察の主張が認められ、事件から7年後の2014年、レイハネさんの死刑が執行されました。
この判決はアムネスティ・インターナショナルや国連から批判されています。また捜査の過程でレイハネさんへ自供を強要するための拷問が行われたとも言われており、いったい何が真実なのか分からないままとなってしまいました。
2016年、ブラジル・リオデジャネイロの選手村近くで(リオオリンピック開催前日だった)家族と車に乗っていた男性が強盗2人組に襲われるという事件がありました。なんと、男性は強盗から銃を奪い取り、1人を射殺してしまいます。
男性は格闘技の心得があったため、1人を捕らえて銃を奪い取ったと報道されました。殺人罪に問われるのか、正当防衛で不起訴となるのか、ネットで議論が起きました。
またこの事件は、ある別の謎でも話題となりました。それは、強盗から家族を守った男性は当初「ロシア副領事」と名乗っていて、その身分を示す身分証明書を所持していたにも関わらず、後の調査でその身分証が偽物だと発覚したこと。
続報がないため、事件の結末がどうなったかは不明です。