義賊とは、盗みを働く犯罪者でありながら、その盗品を貧しい人々等に分け与え、民衆からはヒーローのような扱い受けている人、集団の事を指します。
では、何故義賊は犯罪者、もしくは犯罪集団であるにもかかわらず、民衆からの支持を得ているのでしょうか?一つの理由として考えられるのは、政府に対して不満を持つ民衆の中で真っ先に立ち上がった人々が義賊になるからだというものです。
義賊は民衆の不満から生まれる物であるならば、義賊の行動に民衆が支持するのも必然といえますね。
・ロビンフッド
・石川五右衛門
・鼠小僧
・プーラン・デーヴィー
・ロージャ・シャーンドル
ロビンフッドは、伝説上の人物で、ヘリワード・ウェイクをはじめ、複数の人物が元となって作り上げられた人物だと言われています。
おそらく名前は聞いたことがあっても、どういう人物なのか知らない方も多いと思いますので、映画や小説にもなっているロビンフッドの逸話のあらすじを簡単に解説します。
物語の舞台は12世紀末のイングランド。当時のイングランドはリチャード一世が統治していましたが、第3回十字軍遠征のためイングランドを離れる事になります。この情報を聞きつけたリチャード一世の弟・ジョンはイングランドに帰国。
彼は、祖国イングランドでジョン王となり、民衆の意見を顧みない、私利私欲に満ちた悪政を繰り広げていました。そんな中、ジョン王に反抗し、彼の仲間から金品を奪い、それらを民衆に分け与える義賊が誕生しました。そのリーダーがロビンフッド。
ロビンフッドの物語は、ジョン王の関係者とロビンフッド達の争いを描いた物語となります。
先ほど紹介した、ロビンフッドのモデルとされている人物・ヘリワード・ウェイク。彼は11世紀頃に実在した人物です。
当時のイングランドは、フランスから来たノルマン人に支配されており、祖国を奪還するために一部のアングロサクソン人が奮起します。そのリーダーとされているのが、ヘリワード。確かにロビンフッドの物語と似ていますね。
石川五右衛門は日本人なら一度は耳にしたことある名でしょう。五右衛門は安土桃山時代に活躍した盗賊で、主に権力者に対し悪事を働き、庶民の間ではヒーローとして称えられていたとされています。
しかし、五右衛門は、権力者ばかりを狙っていたことで、豊臣秀吉に目を付けられ、最終的に大きな釜で茹でられて処刑されました。このエピソードが、あの「五右衛門風呂」の由来となります。
鼠小僧は、江戸時代に存在した盗人で、徒党を組まずに、一人で盗みを行っていました。ある伝説では、鼠小僧は悪徳大名等から金銭を盗み、それを貧しい人々に分け与えたとされていますが、実際の鼠小僧の記録では、その事実が確認できていません。
一方、鼠小僧が民衆から人気があったのは事実なようで、窃盗の罪で市中引き回しの刑が行われた際は、鼠小僧を一目見たいという野次馬が押しかけています。また、民衆の人気者の鼠小僧を小汚い恰好で市中を連れ回すと反感を買う恐れがあったので、綺麗な着物を着用させ、薄化粧まで施したというエピソードもあります。
インドの女性盗賊・プーラン・デーヴィーは、カースト最下層・シュードラの貧しい家庭に育ち、激しい差別を経験しています。
彼女は、盗賊団に誘拐された事をキッカケに、自身の盗賊団を立ち上げる事になり、強盗や殺人などに手を染めますが、後に政治家として活躍。しかし、38歳の時に暗殺されました。
彼女の壮絶な半生は、1994年に「女盗賊プーラン」という名で映画化され、反響を呼んでいます。
彼女はある日、盗賊団に誘拐され、その頭の愛人にさせられます。しかし、その盗賊団の中に同じカースト出身の男・ヴィクラムがおり、意気投合。その彼が盗賊の頭を射殺し、彼女はヴィクラムと一緒に新たに盗賊団を結成しました。
しかし、ヴィクラムは部下の裏切りにより殺され、プーランもペヘマイー村で強姦され、その復讐として「ペヘマイー村虐殺事件」でヴィクラム殺害と自身の強姦に関与したとされる22人を殺害しました。
プーランは金持ちから金品を奪っていたので、一部の人には義賊として認識され、人気を博していました。実際に、彼女は政府・警察当局と「死刑は行わない」という司法取引を結んで投降しますが、その瞬間を見守ろうと1万人にも及ぶ民衆が押しかけています。
出所後は彼女の釈放を手助けした政党から出馬し、国会議員に当選しました。ちなみに、彼女は日本にも2回訪問し、日光、鎌倉などの観光地をはじめ、京都精華大学で講演も行っています。
19世紀に活躍した、ハンガリーを代表する義賊。幼い頃に両親を亡くし、それからは盗賊業で生計を立て、盗んだ金品を貧しい人々に分け与えていましたが、ハンガリー警察に捕まり投獄されます。
出所後はハンガリー革命の最中にあって、軍を結成し活躍。革命後はハンガリー独立を目的としたゲリラ運動を繰り広げました。しかし、ここでも逮捕され、恩赦により釈放されるも、その道中に汽車を盗み終身刑を言い渡され、刑務所の中でその生涯を閉じました。
ロージャが貧しい人から金品を強奪したという記録は残されておらず、また、強盗時の殺人が少なく、特に身分の低い召使の人々に手を出したという事は一度もなかったとのこと。彼は自分の中にしっかりとルールを決めて盗みを行っていたのでしょう。
政府から見れば、確かに義賊と呼ばれる方々は悪かもしれません。しかし、民衆から見れば、義賊は正義であり、そもそも政府側が正義だとも限りません。視点を変えれば正義と悪というものは変化していくのです。考えさせられますね。
義賊の方々の半生はどれも波瀾万丈で、だからこそ魅了される人が多いのでしょう。ロビンフッドのように、映画化や書籍化されている逸話もあるので、興味を持った方はご覧になってみてはいかがでしょうか。