過剰防衛とは?正当防衛との違いを事件・判例【3選】からチェックしよう!

正当防衛の条件を満たさなかった場合、過剰防衛とみなされることがあります。正当防衛と過剰防衛の違いを、その意味や条文、事例からチェックしてみましょう!

過剰防衛とは?まずは意味を確認!

正当防衛は、以下の記事で解説している通り、差し迫った違法な権利侵害に対する止むを得ない防御行為でなければなりません。正当防衛が認められた場合は、たとえそれが違法行為であったとしても、有罪とならず、刑罰も行われません。

しかし、その行為が行き過ぎていた場合、それは過剰防衛であるとみなされます。

例えば、反撃せざるを得ず相手へパンチをお見舞いして、相手が行動不能となったことを確認した場合。そのまま現場から逃走し警察へ通報すれば正当防衛と認められるかもしれません。もしも、倒れこんだ相手を蹴るなど、不必要な追撃を行うと過剰防衛とみなされるかもしれません。

罪や刑罰はどうなる?

過剰防衛とみなされた場合は、被告人の罪が認められ有罪判決となります。ただし、情状酌量などで刑が軽くなることがあります。罪の重さは変わらないですが、刑の重さは変わるわけです。

過剰防衛行為による罪に対する刑が軽くなる根拠は以下の2つがあると考えられています。


・【違法減少説】加害者にも権利があるが、それを法で守る必要が減るという考え。フランクに言うと、悪いこと(違法なこと)をしたんだから痛い目(違法な反撃)にあっても仕方がない、という考え。


・【責任減少説】目の前に違法な侵害行為が迫っているような状況下では、それから自身や他人の権利を守るための行為が法に適しているか判断することは難しいはずだという考え。フランクに言うと、相手から違法行為をされそうな状況で、襲われている人は冷静に判断出来ない可能性が高い、という考え。

過剰防衛は3種類ある

過剰防衛は主に以下の3つに分けられます。それぞれ分かりやすく、簡潔に解説します。

過剰防衛

正当防衛が認められるための要件である「急迫不正の侵害」(今目の前に迫っている違法な侵害)は確認されるが、それに対する防御・反撃が「止むを得ず」ではない、必要がなかった、度を越している、といった場合。

誤想防衛

「急迫不正の侵害」が確認されず、あると思い込む、もしくは勘違いするなどして防御・反撃が行われた場合。

誤想過剰防衛

「急迫不正の侵害」が確認されず、あると思い込んでいて、さらにその思い込まれている侵害と比べて反撃・防御が過剰な場合。

または、「急迫不正の侵害」が存在しているが、自身が行った防御・反撃行為がその侵害と比較して度を超えている、ということを認識していない場合。

過剰防衛の判例・事例を見てみよう!

ここまで過剰防衛という概念や、正当防衛と過剰防衛の線引きなどについて見てきました。

ここからは実際に被告人の行為が正当防衛ではなく過剰防衛で、有罪であるとされた事例をチェックしていきましょう!


注: ここで被告人とは、 違法な侵害行為から身を守るために防御・反撃をした人のことでもあります。その行為が罪として起訴され、裁判でそれが有罪か、それとも正当防衛となるか判断します。

判例1:空手家のイギリス人による事件(1981)

1981年の7月5日、イギリス人男性が夜(10時20分頃)の帰宅途中、男性と女性がつかみ合っているのを発見。女性が道沿いの倉庫シャッターへぶつかって尻もちをつき、「ヘルプミー」と叫んでいたため、その女性を救うべく側へかけよりました。

イギリス人男性が男の方へ向き直り両手を差し出したところ、その男は拳を胸の高さへ上げました。イギリス人男性は男が戦闘準備をしたと思い、自身と女性の身を守るため、男へ回し蹴りを見舞います。イギリス人男性は空手の有段者でした。

回し蹴りは顔面へ命中し、男は店頭。頭蓋骨の骨折などを負い、それが原因の出血などによって8日後に亡くなりました。

実はイギリス人男性の勘違いだった!

イギリス人男性は、男が女性を襲っているものと思い込み、それを救うべく行動を起こしました。しかい、実際は酔っぱらった女性を男が連れ添って歩いていただけ。女性は尻もちをついた後、冗談で「ヘルプミー」と声を上げていたのでした。

傷害致死でイギリス人男性は起訴されます。1審(千葉地方裁判所)で、被告人(イギリス人男性)は無罪。2審(東京高等裁判所)で懲役1年6カ月・執行猶予3年の有罪。最高裁による判決も有罪でした。

イギリス人男性による勘違いだったことは過失とならないとしたうえで、果たして防衛のために回し蹴りを放つ必要があったのか、がポイントとなりました。最終的には、他の手段があったにも関わらず、惨事をもたらす可能性のある回し蹴りを行ったことは「誤想過剰防衛」であるという判断となりました。


【罪】: 傷害致死罪

【刑】: 想過剰防衛で減刑となり、懲役1年6カ月・執行猶予3年

判例2:襲いかかる父を棒で反撃(1949)

年をとった父親が棒のようなものを手に攻撃してきたため、被告人は身を守るため、そばにあった「棒」を手に取り反撃した事例。しかし被告人が棒と思っていたそれは「斧」でした。

被告人は父へ反撃した後、興奮していたため度を超えた攻撃を加えてしまいます。その結果、父親は亡くなってしまいました。

誤想防衛?それとも過剰防衛?

仙台高裁はこれを尊属傷害致死罪であるとして有罪判決。ただし、過剰防衛であるとして減刑しました。

これに対して弁護士が上告。斧ではなく棒と思い込んでいたため、反撃が度を越したものになると被告人が認識することは難しかったとして、誤想防衛が成立するはずだという主張でした。

最高裁はこの上告を棄却。理由を要約すると、いくら棒だと思い込んでいたとしても、被告はそれの重さなどから、それがただの棒ではない、それで殴ることはより威力が高くなってしまうことは分かっていたはずだ、ということです。


【罪】: 尊属傷害致死罪

【刑】: 不明だが、過剰防衛で減刑

【参考】: 最高裁昭和24年 4 月 5 日判決

判例3:息子を襲う相手を猟銃で撃ってしまう(1970)

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