正当防衛はどこまで?事例・判例【5選】で成立要件や意味を確認!

法律における正当防衛の意味や要件を解説。過去の事例・判例も交えて、どこまでが正当防衛なのか、どこからが過剰となってしまうのか確認しましょう。

そもそも正当防衛とは

正当防衛とは、違法行為による被害から自分自身や他人を守るためには避けられなかった行為などを指します。そして、その行為がまた違法なものであったとしても犯罪とはなりません。

正当防衛の例

例えば、ある通行人があなたを攻撃してきて、あなたは相手へ反撃する以外その被害から逃れることが出来なかったため、止むを得ず反撃。そして相手が怯んだすきに距離を置いて警察へ通報します。

通常は、人体へ怪我を負わせたあなたは傷害罪で起訴されますが、正当防衛が認められた場合は不起訴となったり、裁判を行ったうえで無罪となったりします。

刑法(法律)の条文

なお刑法は、正当防衛を以下のように定義しています。

急迫不正の侵害に対して、自己又は他人の権利を防衛するためやむを得ずした行為は、正当防衛として処罰の対象とならない(刑法36条1項)

source:elaws.e-gov.go.jp

正当防衛の成立要件: どこまでならOK?

刑法の条文は難しい言葉が使われているため少し分かりづらいですね。ですが、防御・反撃行為が正当防衛であるかどうか判断を左右する要素なので、重要です。

それらの要素をひとつずつ、分かりやすく解説します。

急迫不正の侵害

刑法で急迫不正と述べられているとおり、現時点差し迫っている危機に対処するための行為のみ、正当防衛と成り得ます。

「急迫不正」ではない場合の例としては、過去に不審人物から襲われかけたため、後日その人物を攻撃する、など。この場合、攻撃は正当防衛となりません。

自己又は他人の権利

権利とは、法律で保護されている権利のこと。自身や他人の命、身の安全、所有物などです。

防衛行為と防衛する意思

正当防衛は、あくまで権利を守るための行為でなければいけません。明らかな攻撃の意思や殺意が確認されると、それは正当防衛とはなりません。

過剰な攻撃の例としては、襲ってきた相手へ一度スタンガンを当て行動不能にしたにも関わらず、その後倒れていて抵抗できない相手を蹴る・殴るなどした場合。

必要以上の危害を与えてはいけないということです。

止むを得ない行為(必要性)

行為は、権利の防衛のため。そうせざるを得ないものでなければありません。また、迫っている違法行為・権利を侵害する行為の強度(強さの度合い)に応じたもの、相当したものでなければなりません。

あまりにも被害の少ない行為に対して、攻撃性の高い行為をもって反撃する場合は、正当防衛と認められない事があるということです。

守るものと正当防衛の結果の価値(相当性)

止むを得ない防衛行為により生じた結果が、違法行為により侵される権利(行為により守られたものの価値)よりも大きなものであったとしても、それは正当防衛とみなされることがある、ということが過去の判例から導き出されています。

その過去の事例は以下のようなものです。


AとBが言い合いになっている最中、BがAの左手の指をつかんでねじ上げた。Aは痛さと驚きで思わずBを突き飛ばしたところ、Bはそばに停めてあった車へ頭をぶつけ治療5日間の怪我を負った。

BはAの行為を過剰防衛であると主張した。しかし、Aの行為は相手を突き飛ばしただけであり、そこにたまたま車があったためそのような結果となった。そのため、正当防衛とみなされた。

過剰防衛と成る場合も!

正当防衛と思って行った行為が客観的に見て行き過ぎていた場合、過剰防衛をみなされることがあります。これは、第三者からの主観的な判断によるため、「この線を越えたら必ずこうなる」というようなものではありません。一応、上で解説した要件がその目安となります。

なお、過剰防衛については以下の記事でも詳しく解説しています。判断を誤らないよう、そちらの記事もしっかり読んでおきましょう。

民法上の正当防衛ってなに?

上で説明した正当防衛は刑法における正当防衛。民法でも正当防衛が存在します。民法の場合は、権利を防衛するために止むを得ず行った行為が、結果として誰かに不利益をもたらしたとしても損害賠償の責任は発生しないというものです。

民法の条文

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